猫のこと(後編)

猫のこと(前編)のつづきです。


あと自分のなかのひっかかりとして
なんだかわからないけど、動物を飼うのは

「犬に申し訳ない、、、」

という気持ちもあった。


いや、正直わるいんじゃなくて、
犬の死に方を思い出すと飼うのがこわい、というのが正しい。

あんなふうに死んだのをすぐに忘れて、
他の生きものに向き合えるものかという
感情的なもの。
「わるい」と思ってたりしたら、猫をきちんとかわいがれないかもしれない。
それでは猫にもわるい。

なので、ここはいったん、私の邪念は外において、
息子に「きみが世話を中心になってしなさい。きみの猫だから」
という形にすることにした。

すでに息子というかわいがる人はいるわけだから、私は自分の歩み寄り方で猫にあゆみよっていけばいいやと決めた。

決めたらあとははやかった。
7/14に話があり、16に病院に様子をみにいき、お医者さんに準備することを教えてもらい、18日に引き取ることになった。

病院にはじめて行ったとき。
私たちは、何カ月なのか、どんな色か、オスかメスかさえ知らなかった。
ケージのなかから出された彼(男だった)をみて、わお!となぜか声に出た。
黒と白のねこだ!!

どんな子でもひきとると決めてたけれど、障害があったりしたらどうしよう、育てられるかなとか心配はたくさんあった。
でも、顔をみて、ああたぶんだいじょうぶ、なんとかなるねと腹が決まった。

ひととおりの検査や投薬はしてくれていたのだが、猫エイズ白血病に関しては、去勢するときのタイミングで検査することになった。
この病気だったら長生きはしないそうだけれど、もう腹は決まったので、大丈夫だといいなという感じ。

しかし翌週の帰省がどうしても決まっていたので病院と相談して、とりあえず1週間家に連れ帰り、帰省中は病院にあずけることに。


勝手に運命を感じたのは、
もうひとつある。

yojikとwandaで、ニューアルバムからPVを
先行して作っていたのだが、
今回はそれをアトリエコシュカさんというアニメーション&造形作家さんにお願いしていた。
ヨーワンを模した動物主人公でいこうという打ち合わせのとき、クマとかうさぎとか話が出ていたんだけど、なんとなく猫でいこうという話になった。
猫、ってあんまり縁がないけど、まあいっか、というのと、アトリエコシュカのコシュカはチェコ語で猫だということを知って、それなら猫でいいな!というのもあった。(コシュカさんは生きもの大好きだし、作り手が思い入れのあるもので作ってほしかったから)

で、猫はなに柄にする?なに色にする?ということになり、悩んだ結果、ヨージク白猫とワンダ黒猫にしようということになったのだった。(二人とも黒猫という案もあった)

そのPVは7月頭に公開した。
ヨーワン猫の動きはとてもかわいくて「猫にしてよかったな!」と思っていた矢先の、本件である。

私が黒白の子猫をみて、
「わお!」となってしまったのは
そういうわけ。
どんな色でも模様でもなんでもいいや、と
思う私のところに来たのが
黒でもなく、白でもなく、白黒なのか!
ってそれはもう予想外の贈り物。
きみは来るべくして、来たんだな!
と思わずにいられなかった。

こうして、うちの猫になったのは
「フー」です。
名前は息子が決めた。
私は松谷みよ子さんの「モモちゃんとプー」のプーが大好きなので、マルがとれた「フー」はとてもグッとくる。
モモちゃんが「プーや」というように私も自然と「フーや」と呼びかけるようになった。

長くなりましたが、これが、
突然猫を迎えることになった顛末です。


悪事のかぎりを尽くし
疲れ果てて寝るフー。


子猫の習性や動きは、ほんとにハッとするほどおもしろくて、毎日とてもびっくりしてます。
そんで、わかったこと。
猫はほんとにワンルームでもダンシンするのです。
どんな狭い場所だって、誰もみてなくたって、いつも自分の踊りを踊りたいときに好き勝手に踊っている。
ああ!!
私は猫のことをなんにも知らなかった。
本当にひとりで踊るんだ!!!
楽しい心は隠さない、まったく恥ずかしがらずに好奇心をむきだしにしている。
犬も楽しさを隠せないけど(顔やしっぽに出ちゃう)、どこかで飼い主の目を気にするのが犬の性質。
私はあらためてうちの犬のことを本当に奥ゆかしくてかわいかったなあと思えた。
猫をみることで。

だから世間が犬派とか猫派とかいってるのはほんとあほらしいことである。

私は、「ワンルーム・ダンシン」が猫で作られた
ことがパズルのピースがはまるように腑に落ちて、
フーのダンスを今日もながめています。